
MACD
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MACDとは?見方・使い方・計算方法から注意点まで Fundoraが徹底解説
目次
1. MACDの概要
MACD(マックディー:Moving Average Convergence Divergence、移動平均収束拡散法)は、2つの異なる期間の移動平均線を利用して、トレンドの強弱や転換点を視覚的に把握するためのテクニカル指標です。著名なテクニカルアナリストであるジェラルド・アペル(Gerald Appel)氏によって開発されました。この指標は、トレンドフォロー型の特性を持ちつつ、オシレーター系指標としての性質も兼ね備えています。そのシンプルさと多機能性から、初心者から経験豊富なトレーダーまで、世界中の幅広い層に愛用されています。

2. MACDの構成要素とは?3つの基本とダイバージェンス
MACDは主に以下の要素で構成され、これらを組み合わせて相場分析を行います。
2-1. MACDライン
- 短期EMA(指数平滑移動平均線、通常12期間)から長期EMA(通常26期間)を差し引いた値を結んだラインです。
- トレンドの方向性とその勢いを示唆します。
2-2. シグナルライン
- MACDラインの単純移動平均線(SMA、通常9期間)です。
- MACDラインとのクロス(交差)によって、売買のタイミングを示唆するシグナルとして利用されます。
2-3. ヒストグラム
- MACDラインとシグナルラインの差(乖離)を棒グラフで表示したものです。
- この差が拡大すると棒グラフは長くなり、縮小すると短くなります。トレンドの勢いの増減や、MACDラインとシグナルラインのクロスが近づいていることを視覚的に捉えやすくします。
2-4. ダイバージェンスの活用
ダイバージェンスは、価格の動きとMACDの動きが逆行する現象で、トレンド転換の可能性を示唆します。

- 強気のダイバージェンス(Bullish Divergence): 価格は安値を更新している(下落トレンド継続中)にもかかわらず、MACDのボトムが切り上がっている状態。これは下降トレンドの勢いが弱まり、上昇トレンドへの転換が近い可能性を示唆する買いシグナルとされます。
- 弱気のダイバージェンス(Bearish Divergence): 価格は高値を更新している(上昇トレンド継続中)にもかかわらず、MACDのトップが切り下がっている状態。これは上昇トレンドの勢いが弱まり、下降トレンドへの転換が近い可能性を示唆する売りシグナルとされます。
3. MACDの計算方法
MACDの各要素は以下の計算式で求められます(EMAは指数平滑移動平均を示します)。
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MACDライン:
MACDライン = 短期EMA(通常12期間) - 長期EMA(通常26期間)
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シグナルライン:
シグナルライン = MACDラインの単純移動平均線(通常9期間)
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ヒストグラム:
ヒストグラム = MACDライン - シグナルライン
4. MACDの主な活用方法
MACDは主に以下のシグナルに注目して取引の判断材料とします。
4-1. ゴールデンクロスとデッドクロス
MACDラインとシグナルラインの交差は、最も基本的な売買シグナルです。

- ゴールデンクロス: MACDラインがシグナルラインを下から上に突き抜けること。これは上昇トレンドへの転換や、上昇の勢いが強まる可能性を示唆し、一般的に買いシグナルとされます。
- デッドクロス: MACDラインがシグナルラインを上から下に突き抜けること。これは下降トレンドへの転換や、下降の勢いが強まる可能性を示唆し、一般的に売りシグナルとされます。
4-2. ゼロラインの突破
MACDラインがゼロラインをどのようにクロスするかも重要なポイントです。

MACDラインがゼロラインを下から上に突破すると、短期EMAが長期EMAを上回ったことを意味し、相場が上昇基調に転じたと解釈できます。より強い買いシグナルとされることがあります。
MACDラインがゼロラインを上から下に突破すると、短期EMAが長期EMAを下回ったことを意味し、相場が下降基調に転じたと解釈できます。より強い売りシグナルとされることがあります。
ヒストグラムもゼロラインを境にプラス圏とマイナス圏に分かれ、MACDラインとシグナルラインの位置関係を視覚的に示します。
5. MACDの実践例
実際の取引では、これらのシグナルを組み合わせて判断します。

買いシグナルの例:
MACDラインがシグナルラインをゴールデンクロスし、かつMACDラインがゼロラインよりも上にある(またはゼロラインを上抜ける)場合、強い上昇トレンドの発生を示唆する可能性があります。さらに、価格とMACDの間に強気のダイバージェンスが見られる場合は、より信頼性の高い買い場となることがあります。
例: 短期の12期間EMAが長期の26期間EMAを上抜けた状態(MACDラインがプラス圏)で、MACDラインがシグナルラインを上抜けた場合、上昇トレンドの継続または開始を示唆します。
売りシグナルの例:
MACDラインがシグナルラインをデッドクロスし、かつMACDラインがゼロラインよりも下にある(またはゼロラインを下抜ける)場合、強い下降トレンドの発生を示唆する可能性があります。弱気のダイバージェンスが確認できれば、より有力な売り場と判断できることがあります。
例: MACDラインがシグナルラインを下抜け(デッドクロス)、さらにそのMACDラインがゼロラインを割り込む動きを見せた場合、下降トレンドが一層強まっている可能性を示唆します。
6. MACDの注意点と限界
MACDは有用な指標ですが、万能ではありません。以下の点に注意して使用する必要があります。
- 遅行性: MACDは移動平均線をベースに計算されるため、実際の価格変動に対してシグナルが遅れて現れる「遅行性」があります。特に価格が急激に変動する相場では、シグナル発生時には既に価格が大きく動いてしまっている可能性があります。
- ボラティリティへの対応(レンジ相場での騙し): トレンドが明確に出ている相場(トレンド相場)では有効に機能しやすい一方、価格が一定の範囲内で上下動を繰り返すレンジ相場(ボックス相場)では、MACDラインとシグナルラインのクロスが頻繁に発生し、「騙し」のシグナルが多くなる傾向があります。
- 他の指標との併用: MACD単独のシグナルで判断するのではなく、RSI(相対力指数)、ストキャスティクス、ボリンジャーバンドといった他のテクニカル指標や、トレンドライン、サポートライン・レジスタンスラインなどのチャート分析と組み合わせて使用することで、より分析の精度を高めることが期待できます。
7. まとめ
MACDは、トレンドの方向性、強弱、そして転換の可能性を見極めるために非常に有効なテクニカル指標です。「MACDライン」と「シグナルライン」のクロス、「ゼロライン」との関係、そして「ヒストグラム」の増減や「ダイバージェンス」の発生に注目することで、多様な売買シグナルを捉えることができます。
そのシンプルさから初心者にも扱いやすい一方で、奥深い分析も可能なため、多くのトレーダーに利用されています。ただし、MACDにも限界があることを理解し、単独で過信するのではなく、他のテクニカル指標やファンダメンタルズ分析などと組み合わせることで、より確度の高い取引判断を目指しましょう。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。
この記事は、Fundoraの経験豊富な市場アナリストチームによって執筆および監修されました。