
ATR
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ATR(Average True Range)
1. 概要
ATR(Average True Range)は、J. Welles Wilderによって1978年に開発された、相場のボラティリティ(価格変動の幅)を測定するためのテクニカル指標です。ATRは、特に価格の変動の激しさを示すために使用され、トレーダーがリスク管理やストップロスの設定を行う際に役立ちます。ATRは、価格がどれだけ大きく動くかを把握するために、過去の「真の範囲」(True Range)を平均化することで算出されます。
ATRは、単独でトレンドの方向を示すことはありませんが、価格の変動の強さや幅を計測するため、ボラティリティの高い時期や安定した時期を把握することが可能です。
2. ATRの計算方法
ATRは以下の計算式を使って算出されます:
True Range (TR)=max(High−Low,∣High−Previous Close∣,∣Low−Previous Close∣)\text{True Range (TR)} = \max \left( \text{High} - \text{Low}, \left| \text{High} - \text{Previous Close} \right|, \left| \text{Low} - \text{Previous Close} \right| \right)
- High: 現在の期間の高値
- Low: 現在の期間の安値
- Previous Close: 前回の期間の終値
次に、True Range(TR)の平均を取ることでATRを求めます。通常、ATRは14期間のTRの平均として計算されます。
ATR=∑i=114TRi14\text{ATR} = \frac{\sum_{i=1}^{14} TR_i}{14}
ATRは、これを毎日、毎週、または他の時間枠において計算し、変動の幅を定量的に示します。
3. ATRの活用方法
ボラティリティの評価
ATRは、相場のボラティリティを測定するために使われます。ATRが高いほど市場の変動が大きく、逆にATRが低いほど市場が安定していることを示します。ATRはトレンドの強さや方向性を示すものではなく、単に相場がどれだけ動いているかを示します。
リスク管理とストップロスの設定
ATRを使って、適切なストップロスを設定することができます。例えば、ATRの値が大きければ、市場が変動しやすいため、広めのストップロスを設定することが推奨されます。反対にATRが小さい場合、変動が少ないため、ストップロスを小さめに設定することが可能です。
トレンドの強さを補足
ATRを他の指標(例:移動平均線やMACD)と組み合わせて使用することで、トレンドの強さや安定性を確認できます。ATRが高いときは、市場が動いており、トレンドが強い可能性があるため、トレンドフォロー戦略が有効です。
4. ATRのメリットとデメリット
メリット:
- 簡単で直感的: ATRは非常にシンプルで、使いやすい指標であり、価格のボラティリティを一目で把握できます。
- 市場のリスク評価に役立つ: トレーダーが市場のリスクを理解し、ストップロスやポジションサイズを決定する際に非常に有用です。
- 様々な市場で適用可能: ATRは株式市場、FX市場、商品市場など、あらゆる市場で利用できる汎用的な指標です。
デメリット:
- 方向性を示さない: ATRは価格の動きの幅を示すだけで、トレンドの方向を示すものではありません。方向性を確認するためには他の指標と組み合わせる必要があります。
- 過去のデータに依存: ATRは過去の価格データに基づいて計算されるため、未来のボラティリティを予測することはできません。急激な市場の変動があった場合でも、その動きを反映するのは遅れることがあります。
5. 実践例
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トレンドの強い市場での利用:
ATRが高い場合、価格の変動が大きいことを示しており、トレンドが強い可能性が高いです。この場合、トレンドフォロー戦略を活用し、利益を伸ばすことを考えます。ATRが小さい場合は、レンジ相場が続いている可能性が高いため、レンジ取引を検討することが有効です。 -
ストップロスの設定:
例えば、ATRが1.0であれば、取引時にストップロスを1ATRの距離だけ広げて設定することで、市場の自然な価格変動に対応し、取引がノイズに反応しないようにすることができます。逆にATRが小さい場合は、リスクを小さく見積もって、ストップロスを狭く設定することが可能です。
6. まとめ
ATR(Average True Range)は、市場のボラティリティを測定するための非常に有用な指標です。価格の変動幅を把握することで、リスク管理やストップロスの設定に役立ちます。ATRは、トレンドの方向性や強さを示すものではありませんが、他の指標と組み合わせて使用することで、効果的に活用できます。特に、レンジ相場やボラティリティの高い市場では、その精度と有用性を発揮します。
ATRを取り入れたリスク管理を行うことで、トレードの成功確率を高めることができるでしょう。