
期待値とは何か|数式で測る
Share
期待値とは何か|数式で測る
目次
1. はじめに──“当たるか外れるか”で判断していませんか?
トレードの世界では、「勝率が高い手法こそ正義」と思われがちです。しかし、現実はそう単純ではありません。
勝率が高い手法が必ずしも利益を生むわけではない──これはトレード初心者にとって、意外かもしれません。
同じ勝率でもリスクリワード(平均利益と平均損失の比率)が違えば最終成績はまったく別物です。その差を一瞬で見抜く軸が期待値(Expectancy)。
この記事では、初心者でも納得できる形で、期待値の基本から応用までを解説し、Fundoraがどのようにこの指標を実戦に組み込んでいるかをご紹介します。
2. 期待値とは何か?──「平均していくら増えるか」を数式で測る
期待値とは、「1回のトレードが長期的に口座をどれくらい増減させるか」を示す指標です。期待値がプラスであれば資金は増え続け、ゼロならコイントスと同じ、マイナスなら続けるほど資金は減ります。
期待値の計算式
期待値 =(勝率 × 平均利益)-〔(1 - 勝率)× 平均損失〕
要するに、「1回あたりの平均収益」を数式で算出する方法です。この指標を基にすれば、「勝率が高い=有利」とは限らないことがわかります。
3. 勝率とリスクリワードは単体では不完全
期待値を考える上で重要なのは、「勝率」と「リスクリワード」を単体で評価しないこと。なぜなら、以下のようなケースがあるからです。
- 勝率70%でも平均利益が平均損失の半分なら期待値はゼロ
- 勝率35%でも平均利益が平均損失の3倍なら期待値はプラス
勝率だけでも、リスクリワードだけでも優位性は語れない──これが期待値が「すべてを決める」理由です。
4. 具体例でイメージする期待値
シナリオ A: ゼロゲーム
- 勝率:50%
- 利益:損失 = 1 : 1
- 期待値:0円(ゼロサムゲーム)
シナリオ B: 長期的にプラス
- 勝率:50%
- 利益:損失 = 2 : 1
- 期待値:+5,000円
シナリオ C: 高勝率でもマイナス
- 勝率:70%
- 利益:損失 = 1 : 2
- 期待値:-9,000円
勝率だけでなく、リスクリワードを考慮しないと、長期的に資金が減り続けるケースがあることが分かります。
5. 金融工学の裏付け──期待値とリスク・オブ・ルイン
クオンツ運用では、モンテカルロ解析やブートストラップ法を用い、以下の要素を検証します。
- 期待値がプラスでも資金が尽きる確率(リスク・オブ・ルイン)
- 到達し得る最大ドローダウン
期待値がプラスであっても、破産リスクがゼロになるわけではないことに注意が必要です。Fundoraが「リスク1%トレーディング基準」を推奨し、「デイリー損失制限5%」を組み合わせるのは、リスクを生き延びる設計が必要だからです。
6. 行動経済学から見る“勝率バイアス”
人は損失を過大評価し、連敗を極端に恐れる傾向があります。これはプロスペクト理論で説明される現象で、「勝率が高い=安心」と錯覚しがちです。
しかし、感情に優しい手法と、資金が増える手法は別物です。期待値で客観視すれば、連敗しても淡々と続けるべき手法と、即座に改良すべき手法が明確になります。
7. まとめ──期待値思考を身につける三つのステップ
- 過去30~50トレードの平均損益を集計し、期待値を算出する
- 期待値がプラスでもドローダウンが耐えられる範囲か検証する
- 改善は「勝率アップ」より「リスクリワード拡大」から着手する
数字で優位性を証明できれば、連敗はただのゆらぎです。期待値を武器に、感情ではなく統計で市場を攻略しましょう。